売上に貢献する法務になるために-LAPRAS 法務部門責任者 飯田裕子氏-<前編>

AIによるITエンジニアのスカウトサービスなどを手掛けるLAPRAS株式会社。エンジニアを中心としたスタートアップ組織のなかで法務部門の責任者を務める飯田裕子氏は、法務を主軸としながらも、新入社員の育成からWorkingEnvironmentまで幅広い業務をこなします。今回は、キャリアと経験に裏打ちされた飯田氏の仕事に対するスタンスに迫ります。
なお、今回は、飯田氏が普段アウトプットに活用されているnoteのリンクも散りばめておりますので、詳細が気になった方は、是非合わせてお読み頂けますと幸いです。

〈聞き手=山下 俊〉

法務へ行き着く前に知った、数字を作ることの重要性

山下 俊

まずは、飯田さんのこれまでのキャリアの流れを教えていただけますか?

飯田 裕子

弁護士を目指し法学部で勉強していましたが、予備試験に大学3〜4年次で合格していく同期を見てロースクールへの進学を諦め就職を決意し、ファーストキャリアにはSIerの営業職を選びました。本当は新卒で法務の仕事に就きたいと考えていたのですが、一次面接までにすべて落ちてしまいました。

飯田 裕子

1社目で知ったのは、大手では新卒法務の枠はほとんどない一方で、バックグラウンドのない方々が社内異動で法務に回るという実態です。加えて、営業として法務の人たちと関わるうちに「自分が法務だったらもっとこうするのに」といった温度感の違いを感じ、法務をやりたい思いが強くなりました。

「私、4年間法学部で勉強してきたのに、本当にここで諦めてしまっていいのかな?」と。

LAPRAS株式会社 法務部門責任者 飯田裕子氏
山下 俊

法務への思いが強まってきたわけですね!

飯田 裕子

そこで、転職活動をして司法書士法人トリニティグループへ入社しました。同事務所は無資格者でも採用して育成する方針で、登記補助だけでなく、営業からヒアリング、採用、マーケティングまで広範囲に仕事を任せてもらえました。行政書士の資格を取得してからは、起業コンサルティングに近い業務も担当しましたね。

飯田 裕子

印象的だったのは、労働時間と売り上げから、自分が1時間当たりどれくらい会社に利益を出せているのかを毎月教えていただけることです。

山下 俊

それはシビアですね…どのような形で伝えられるんですか?

飯田 裕子

「1時間当たりいくら稼いでます」ということが伝えられるので、給料を差し引くと自分の仕事が赤字か黒字かわかるんです

黒字化するために自分で営業することが必要だと気づいてからは、医療法人の手続きの勉強をしたり、パフォーマンスの高いトレーナーの士業らしい営業方法や顧客とのコミュニケーションのやり方を参考にしたりして、法律の先にある売り上げのことを意識して、営業の経験も活かしながら働くようになりました。個人としても法人としても、それぞれが黒字化することがいかに大変かということを痛感しましたね。

飯田 裕子

前職は規模の大きな商材を動かしていてあまり意識していませんでしたが、「法律ってこんな値段で売って、こうやって儲かるんだ」という感覚がこの事務所時代の経験で得られたように思います。司法書士法人時代の経験が、会社の売上・黒字化に貢献している人を絶対に困らせないという今の仕事のスタンスに一番繋がっているなと感じています

飯田 裕子

その後は士業総合コンサルティングを手掛けるベンチャー企業へ転職し、Webサイトやロゴ、名刺制作から、社内PCや出張の手配、秘書業務、採用、人材育成まで、士業の先生方の専属業務以外はすべて担当しました。1000件のテレアポもやりましたね。

飯田 裕子

当社にくるまで「自分は法務にこだわるあまり、法律の世界でしか生きられないんじゃないか」という気持ちがあったのですが、こうした経験から、広く”バックオフィス”という選択肢があること、リーガルで培った考え方は法務じゃなくても活かせる場所があるということがわかってきたんです。

山下 俊

そこから現在のLAPARSにはどのような経緯で入社されたのですか?

飯田 裕子

士業採用はエンジニア採用とスペシャリストの採用という点で似ている部分が大きく、これまでのバックオフィスの経験も活きるのではと考え、当初は人事・採用広報として採用してもらいました。

ただ、入社当時は法務の専任者がおらず経理の方が兼務している状態だったので、「飯田さんって法律できるんだ、だったらやってみる?」と声を掛けられ、HR&Legalという形で法務の仕事も任されるようになりました。

飯田 裕子

今でも新入社員の育成やWorkingEnvironment(働く環境づくり)なども担当していますが、完全にメイン業務は法務になっています。

 “兼業法務”のお作法

山下 俊

現在も法務以外の仕事も担当されているということでしたが、他社でも社内兼業している法務担当者は多いと思います。
“兼業法務”のメリット・デメリットがあれば教えていただけますか?

飯田 裕子

兼業の内容にもよると思うのですが、バックオフィスのなかでも法務ってどちらかというと感謝されづらい仕事なんですよね。当社でも法的な視点から開発を止めなければならないときもありますし、NGを出す機会がどうしても発生してしまいます。

飯田 裕子

一方で、新入社員の育成など総務的な仕事って感謝されやすいんです。労務に対しても、書類を作成してもらったり、入社時にお世話してもらったりしたことで良い印象を持っている人は多いと思います。こうした機会を利用して、社内との信頼関係を築けることは兼業法務のメリットの1つかもしれません。いざというときにNGが言えるよう、社内に対して先に恩を売っておこうというわけです

山下 俊

なるほどですね!ありがとうございます!
それでは「兼業法務」のデメリットはいかがでしょうか?

飯田 裕子

法務として自分の仕事に割ける時間が少ないことはデメリットだと思います。たとえば、自分で調べて答えを出したい案件があったとしても、時間の都合で弁護士の先生の答えを先にもらう形になってしまう。法務の職人としてのこだわりは捨てなければならないという辛さはありますね。

山下 俊

本当にその通りだと思います!
自分で調べると理解度も違いますし、スキルアップにも繋がるから、なるべく自分でやりたいという気持ちはわかります。でも、時間がどうしても足りない、という話ですよね。

飯田 裕子

はい。業務の優先順位を考えると時間的な制約が出てきますし、法務という観点から見るとインプットする情報が結論ありきになってしまい、1から組み立てる力をつける時間的余裕がない難しさはあると思いますね。

山下 俊

優先順位という言葉が出ましたが、タイムマネジメントや業務のスムーズな進行のために工夫されていることはありますか?

飯田 裕子

単純作業はアシスタントの方に全部お願いするようにしています。
仕事の型が一度できると楽なので定常業務として回したくなりますが、私は自分で一通り回してみて、ある程度の型化ができたら派遣やアルバイトのアシスタントメンバーに渡すということをひたすら繰り返しています。自分の時間は、とにかくカオスに突っ込んでいこう、と。

山下 俊

そういったことは個人だけでなく、会社にとっても非常に大事なことだと思います!

飯田 裕子

あとは、組織がまだ小さな会社ということもあり、今受けている依頼の一覧を社内に向けて開示し、事業部の週次定例で進捗状況を報告することで、優先順位を絶対に誤らないようにしています。

山下 俊

案件を開示するのは面白いですね!
ちなみにその「優先順位」はどのようにつけていくのですか?
依頼を受けた順からやっていく形になるのでしょうか…?

飯田 裕子

依頼を受けた順は関係ありません。
基本的には、「売り上げに繋がる納期の近いもの」が最優先です。中長期戦略に繋がる案件がその次くらいの優先順位になります。ちょっと興味があるけれどまだ試行段階のものや経営に影響を及ぼさないもの、たとえば契約書のフォーマットをきれいにしたいといったようなことは優先順位が低いですね。

山下 俊

そういった優先順位の付け方の基準も、事業部門には共有されているのでしょうか?

飯田 裕子

明確な基準は出していないですが、私のほうで判断できないものは「今、こういう依頼ももらっているんですけど、どちらを優先しますか」とその場で聞いて、事業部側で調整してもらうようにしていますね

同じことをやるのは、ダサい

山下 俊

仕事を型化して渡す、というお話がありましたが、具体的に法務業務で型化できているところを教えて頂けますか?

飯田 裕子

たとえば、契約書作成の依頼は個人情報がオープンにならないようにして必要項目をフォームに埋めてもらうようにしています。

あとは、Q&Aがとにかく多いので、社内メンバーには相談する前に、社内Wikiで検索するようにしてもらっています。
そのために私としては、皆が検索しやすいように必要な単語をページの最後にまとめておくなど、Q&Aはできるだけ社内Wikiに書き起こして、こまめに更新するようにしています。

飯田 裕子

また、こうした社内Wikiを作る際には、質問と回答の間の論理をしっかり埋めておくようにすると「このケースと似ているんですけど、ここだけ違うんですよ」といった形で相談されるようになるので受け答えがスムーズになります。そのためにも、時間がない中で、自分なりの論理をちゃんと作った上で回答し、履歴として残す。最初は手間ですが、とにかく同じ単純業務は二度としないぞ! という強い気持ちでやっていますね。

山下 俊

飯田さんのその強い気持ちって、一体どこから出てくるんですか?

飯田 裕子

LAPRASはエンジニア中心のいわばギークな会社なので、人海戦術を嫌うんですよね。広く受け入れられている技術や解決法を一からつくる、いわゆる「車輪の再発明」をやりたくない人が多いんです。「同じことやるのは、ダサい」みたいな感覚です。

飯田 裕子

たとえば、私が社内で使っているサービスに、リストのコピー機能がない仕様になっていて困っていたら、エンジニアがボタン1つでコピペできるツールを作ってくれたり。そうした人手による無駄な作業をなくしたいという方針が社風としてあるので、法務も自然と影響されているように思います。

山下 俊

いい言葉ですね!
そうすることで、自分が何ができるかにフォーカスし続けることができますよね!

(次回、後編へ続きます)

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